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[341] 拾月
季節は秋、
と言いたいところだが、
ここ数年は晩夏から初冬へ直結している。
村の鎮守の神様も、
豊年満作の秋とはこのような時候であったかと、
不審がっておられるに違いない。
勘定場 2023/10/01(Sun) 09:22 | 返信 | 削除 |
[340] 玖月
うち続く残暑、
それもそのはず、
八月十五夜は今月末の二十九日なのである。
風に揺らぐススキの穂に季節を感じる日を、
ただ待つばかりである。
勘定場 2023/09/01(Fri) 08:47 | 返信 | 削除 |
[339] 至評
千秋氏の評言は至高のものであり、
曲の解説としても類を見ないものとなっております。
これが実際に公演をご覧になっての劇評ならばと、
生憎の公演中止が惜しまれてなりません。
勘定場 2023/08/11(Fri) 14:23 | 返信 | 削除 |
[338] 令和五年七、八月文楽公演 第二部 「妹背山婦女庭訓」その3
 山城を聴いて、いたく感銘を受けたのは、その声が確かに彼方から響いて来たからなのである。  
 荘重にして重厚、悽愴の気配すらあるその声が。

 現今チャットGPTに代表される生成AIはコンピュータの解析をもとに短時間で、文章、絵画、楽曲を作成する事が出来る。やがて瞬時にという事になるだろう。   即ち大量の文章、絵画、楽曲が溢れ返る事になるのだが、しかしそれらは所詮、認識されたものを認識する事を繰り返すだけであって、循環という相対性の罠に嵌り、終にその循環諸共暗黒の虚無に呑み込まれてしまう事になる。我々はメルトダウンしかけているのである。

 虚無に呑み込まれんとする我々を喰い止めようとするのが、彼方からの「運命」の声なのだ。何故なら我々の存在証明とは我々に示された「運命」とそれに呼応する「受苦」しかなく「運命」の声に呼応しなければ、我々が虚無の底に滑り落ちるのは必定であるからだ。

 お三輪の「運命」を見てみよう。彼女の呼応は凄まじく、「袖も袂も喰い裂き喰い裂き‥姿心もあらあらしく」駈け行くのだが、これは個人的な嫉妬の域を超えて、お三輪という存在が裂け割れ、異形のものを現出させたのであって、お三輪はその人格を裂き割って「運命」に呼応したのである。故にその血は入鹿を迷わせ、「横笛堂」は「今の世迄鳴響」いているのだ。
 「疑着」は虚無に抵抗している。
 
「金殿」に於ける山城の語りは、全て神の領域からの「運命」の声として彼方から湧き上がって来るのであって、聴く者がそれに呼応すれば、相対性の虚無の渦巻きから浮上出来るかも知れないと確信出来る程の力がある。

 現代に於いて、山城が重んぜらるべき所以は其処にある。
 「運命」を語る山城に感銘を受けずに居られようか。

☆ 呂太夫はその特色ある「捩れ」によってどんな「運命」を垣間見させてくれただろうか。
 公演中止が残念であった。

          以上
千秋 2023/08/08(Tue) 20:19 | 返信 | 削除 |
[337] 令和五年七、八月文楽公演 第二部 「妹背山婦女庭訓」その2
その可能性を極限まで追求し、遂行したのが、山城ではなかったか。

☆ 山城 藤蔵 録音「浄曲窟」
山城の「金殿」には究極の「語り」が呈示されている。
 それは「運命」の「語り」である。

 山城の「金殿」はスケールが大きく、しかもリズム、曲調とも端正で極めて安定し、且つ飽きさせる事がない。そして全体を統一するのは、悽愴と言っていい程の凄みなのである。荘重にして重厚、時に苛烈。
 「運命」は「地」として現れる。「行きかう女中見咎めて‥むらむらと‥寄りたかり。」こうして「運命」の地平は展かれて行くのだ。お三輪の「詞」は「運命」の上を転々とする。山城にはもはや嶋太夫の瑞々しさは無いが、それ故に「運命」に侵蝕されたお三輪の悲劇が凄みを帯びてくる。
 山城によるお三輪の「疑着」は「運命」の齎したもので、お三輪は「運命」に呼応したのである。
 「じろりと見や」る鱶七は、山城に於いては「運命」の眼差しでお三輪を見ているのであり、「其訳語らん」と述べるのは神的領域からである。
 つまり山城の語りは神的領域からの「運命」の語りであって、「運命」の統べる「地」の上を
翻弄される人間存在の呻きとしての「詞」が転々とするという二重構造を形成しているのだ。
 そして山城の凄みある語りが「運命」の苛烈さを聴衆の耳に激突させる事になる。「髻掴んで氷の刃。脇腹ぐつと‥」の「ぐつと」に込められた差し通すその肉体の厚みは「運命」のリアルさを感じさせ、聴衆を慄然とさせるのである。
 しかもこの山城の、神的領域から「運命」を語るという究極の浄瑠璃は、お三輪を疑着へと呼応させると共に、聴衆をも日常を超えた大いなるものと呼応させるのである。 
千秋 2023/08/08(Tue) 20:11 | 返信 | 削除 |
[336] 令和五年七、八月文楽公演 第二部 「妹背山婦女庭訓」その1
八月四日に劇場に向かうべく準備をしていると、あろう事か、「複数の体調不良者が確認された為八月二日(水)から五日(土)まで全ての公演を中止」との報が入り、ガックリしました。前代未聞との事ですが、どうしようもありません。
 それ故、今回は急遽嶋太夫と山城の「金殿」の評を以って、劇評に換える事にしました。

   「金殿」
☆ 嶋太夫  清介  DVD
嶋太夫は声瑞々しく、お三輪のおぼこ育ちの娘らしい羞らいが、絶妙の間、「ひよつと愛想をつかされたら。‥と言つて此儘に。」に表出されており、他にも美しい間が数多あって、お三輪の純情、可憐さが間から溢れんばかりである。それ故に旋律表現の流麗さと相俟って、その純情、可憐、一途さが官女による虐めを受けての哀切に繋がり、一転して疑着の相を表すその変化の奥にも内なる一貫性がある事を感じさせるのである。
 その為嶋太夫の語りには、奇妙な重層性が現れ、表現と伝達に神秘性が感じられるのである。
 「姿心もあらあらしく」と疑着の様相を表現しても、嶋太夫は(それだけ凄みには乏しいが)お三輪の純情を忘れはしない。その結果、表面上の疑着という様相の底に、一貫するお三輪の純情が透けて見える不思議な二重構造が形成されるのである。
 その為聴衆は疑着に純情を感じると言う特異な体験をする事になる。これは浅薄なコミュニケーションには無い表現と伝達の神秘であると言えよう。
 嶋太夫の魅力は、その美しい語りだけでは無く、「語り」の可能性が展かれて、重層構造を示すところにあるのだ。
千秋 2023/08/08(Tue) 20:05 | 返信 | 削除 |
[335] 情報資料室更新
トップページにリンクがございます。
今回も価値ある資料群を増補いただき感歎の至りであります。
勘定場 2023/08/03(Thu) 09:20 | 返信 | 削除 |
[334] 捌月
旧暦では水無月半ば。
今年は新暦との差が一ヶ月半と大きい。
ゆえに残暑も長く厳しいかと。
初秋の季語七夕は今月二十二日である。
風の音に驚く日の訪れが待ち遠しい。
勘定場 2023/08/01(Tue) 18:37 | 返信 | 削除 |
[333] 七・八月公演評
寸評の拡大版みたいなものですが、
酷暑でもありこれにてご勘弁いただければ。
勘定場 2023/07/24(Mon) 18:21 | 返信 | 削除 |
[332] 夏休み公演初日極上々吉
「かみなり太鼓」
「入鹿誅伐」
「住吉鳥居前」の奥
「釣船三婦内」の切

詳細は劇評にて。
勘定場 2023/07/23(Sun) 07:14 | 返信 | 削除 |

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