十二月の至福
十種香:土佐=清六[195705道文]19600522mMBS
十種香:松=清六19600323演舞場
何と言っても美声家の語り場である。
そして、
三味線が太夫を導くときの美点。
浄瑠璃義太夫節の音楽性=「音曲の司」の本質が、
如実に現出する。
四代目の清六は山城との比較で貶められがちであるが、
それは、
衰退する山城を率直に捉えていたがゆえに、
正しく認識できない評論家などから批判されたものに他ならない。
二つの「十種香」に耳を傾ければ、
脳内がいかに幸せとなるかを感じ取ることができよう。
もちろん、
十二月東京の陣容に期するものがある故でもある。
十種香:松=清六19600323演舞場
何と言っても美声家の語り場である。
そして、
三味線が太夫を導くときの美点。
浄瑠璃義太夫節の音楽性=「音曲の司」の本質が、
如実に現出する。
四代目の清六は山城との比較で貶められがちであるが、
それは、
衰退する山城を率直に捉えていたがゆえに、
正しく認識できない評論家などから批判されたものに他ならない。
二つの「十種香」に耳を傾ければ、
脳内がいかに幸せとなるかを感じ取ることができよう。
もちろん、
十二月東京の陣容に期するものがある故でもある。
十一月の特別
脇が浜解説:綱・大西
宝引:綱=弥七
「宝引」は綱弥七に極まる。
そして、
綱弥七による「宝引」は数あるが、
この録音は極上にして特別なものである。
自分が好きなものは他人にも知らせたい、
これは人情として当然である。
ところが、
唯一無二でかけがえのないものとなると、
この絵だけは誰にも見せたくない、
この店だけは誰にも教えたくない、
というところに至る。
今回は咲太夫師が勤められる(三味線は燕三)ということでもあり、
特別に皆様のお耳へもお達しすることとした。
一聴にして、
極上かつ特別である理由がおわかりいただけると思う。
宝引:綱=弥七
「宝引」は綱弥七に極まる。
そして、
綱弥七による「宝引」は数あるが、
この録音は極上にして特別なものである。
自分が好きなものは他人にも知らせたい、
これは人情として当然である。
ところが、
唯一無二でかけがえのないものとなると、
この絵だけは誰にも見せたくない、
この店だけは誰にも教えたくない、
というところに至る。
今回は咲太夫師が勤められる(三味線は燕三)ということでもあり、
特別に皆様のお耳へもお達しすることとした。
一聴にして、
極上かつ特別である理由がおわかりいただけると思う。
十月の直験
二上り三番叟:相生=重造
万歳・海女・鷺娘:南部織の十九=弥七錦糸団二郎R
正直者の頭に神宿る
彼処には神在すに仍て霊験灼なり。
彼処とは此処に非ず。
故に間直し、真直し。
万歳・海女・鷺娘:南部織の十九=弥七錦糸団二郎R
正直者の頭に神宿る
彼処には神在すに仍て霊験灼なり。
彼処とは此処に非ず。
故に間直し、真直し。
九月の記念
浄曲窟埒外 悪疫退治祈念
科有る者を成敗の磔といふはた物の。塩梅見よと振廻し日来には似ぬ強勢も。狐や力添へぬらんはげしかりける働なり。落合は逃仕度段八雲蔵生兵法。肋と眉間に大疵請けのたり廻つて死してげり。
師弟は内証敵同士。このまゝ帰るは卑怯者。返せと一声切りつくる。得たりと請ける半蓋に馬士の胴切重切。
言捨てかけ出す後より。はつしと打つたる手裏剣は。骨を貫く鋼鉄の石鑿うんとばかりに息絶ゆる。
一心こつたる主の仇かよはき力にふりほどき付入/\いどみ合。念力通す恨みの刃。請取給へと名乗懸。柄もおれよと突通され。流石の岩藤七転八倒。
はね込み蹴込み泥まぶれ。はねは我が身にかゝるとも知らず立つたる後より。逸散に来る手負猪。是はならぬと身をよぎる。駈来る猪は一文字。木の根岩角踏立て。蹴立て鼻いからして泥も草木も一まくりに飛行けば。あはやと見送る定九郎が。背骨へかけてどつさりと肋へ抜ける二つ玉。うんともぎやつとも云ふ間もなく。ふすぼり返つて死したるは心地よくこそ見えにけれ。
実盛透さず馬上より用意の鎌縄打かくれば。首にかゝつてきり/\/\。引寄引上ひつ掴み。遖儕は日本一の。大欲無道の曲者めと。鞍の前輸に押付て。首かき切て捨てげり。
気転の駒沢有合ふ温湯刀に注げば。下には血汐と心得て。してやつたりと畳はね上げ。現はれ出づる笆久蔵。駒沢覚悟と斬付くる。刃を恐れぬ煙管のあしらひ。廊下伝ひに来かゝる亭主。スハ何事と窺ふ内。苦もなく刀打落し。取るなり斬るなり途端の拍子。首は遙かに飛散つたり。ヤレ天晴お手の内。
判官輝国大きに感じ。伯母御前に先とられ跡に退つたおのれが成敗。強欲非道の皺頭と水もたまらず打落す。
モウこれまでと八汐が懐剣。心得政岡請流す。互に嗜む太刀さばき手を尽したる。二人の女。我が子の恨み一心に突込む懐剣打落し。直ぐに切込む八汐が肩先。ひるむを取つて突通され。虚空を掴んで悶き死。悪の報ひは忽ちに心地よくこそ見えにけり。
科有る者を成敗の磔といふはた物の。塩梅見よと振廻し日来には似ぬ強勢も。狐や力添へぬらんはげしかりける働なり。落合は逃仕度段八雲蔵生兵法。肋と眉間に大疵請けのたり廻つて死してげり。
師弟は内証敵同士。このまゝ帰るは卑怯者。返せと一声切りつくる。得たりと請ける半蓋に馬士の胴切重切。
言捨てかけ出す後より。はつしと打つたる手裏剣は。骨を貫く鋼鉄の石鑿うんとばかりに息絶ゆる。
一心こつたる主の仇かよはき力にふりほどき付入/\いどみ合。念力通す恨みの刃。請取給へと名乗懸。柄もおれよと突通され。流石の岩藤七転八倒。
はね込み蹴込み泥まぶれ。はねは我が身にかゝるとも知らず立つたる後より。逸散に来る手負猪。是はならぬと身をよぎる。駈来る猪は一文字。木の根岩角踏立て。蹴立て鼻いからして泥も草木も一まくりに飛行けば。あはやと見送る定九郎が。背骨へかけてどつさりと肋へ抜ける二つ玉。うんともぎやつとも云ふ間もなく。ふすぼり返つて死したるは心地よくこそ見えにけれ。
実盛透さず馬上より用意の鎌縄打かくれば。首にかゝつてきり/\/\。引寄引上ひつ掴み。遖儕は日本一の。大欲無道の曲者めと。鞍の前輸に押付て。首かき切て捨てげり。
気転の駒沢有合ふ温湯刀に注げば。下には血汐と心得て。してやつたりと畳はね上げ。現はれ出づる笆久蔵。駒沢覚悟と斬付くる。刃を恐れぬ煙管のあしらひ。廊下伝ひに来かゝる亭主。スハ何事と窺ふ内。苦もなく刀打落し。取るなり斬るなり途端の拍子。首は遙かに飛散つたり。ヤレ天晴お手の内。
判官輝国大きに感じ。伯母御前に先とられ跡に退つたおのれが成敗。強欲非道の皺頭と水もたまらず打落す。
モウこれまでと八汐が懐剣。心得政岡請流す。互に嗜む太刀さばき手を尽したる。二人の女。我が子の恨み一心に突込む懐剣打落し。直ぐに切込む八汐が肩先。ひるむを取つて突通され。虚空を掴んで悶き死。悪の報ひは忽ちに心地よくこそ見えにけり。
八月の他無
志渡寺:若=勝太郎(補)
志渡寺:津=寛治(補)
この演目ならこの人より他には無い。
盤石の横綱相撲。
その綱とは白麻製の注連縄。
故に金毘羅大権現も示現し給うのである。
このように、
他は要らぬと断じさせる奏演が残されていることには、
エヽ有難いと伏し拝むばかり。
しかしながら、
放送局側の都合で致命的なカットがされている場合もある。
今回、やむを得ず他の音源にてその欠を補った。
それこそ重大な恣意的操作ではないかとの非難は承知の上で、
やはり浄瑠璃への無知蒙昧が為せる業を放置することは出来なかったのである。
お聞きの皆様には、この補綴が問題ないものかどうか、
是非ご確認いただきたい。
志渡寺:津=寛治(補)
この演目ならこの人より他には無い。
盤石の横綱相撲。
その綱とは白麻製の注連縄。
故に金毘羅大権現も示現し給うのである。
このように、
他は要らぬと断じさせる奏演が残されていることには、
エヽ有難いと伏し拝むばかり。
しかしながら、
放送局側の都合で致命的なカットがされている場合もある。
今回、やむを得ず他の音源にてその欠を補った。
それこそ重大な恣意的操作ではないかとの非難は承知の上で、
やはり浄瑠璃への無知蒙昧が為せる業を放置することは出来なかったのである。
お聞きの皆様には、この補綴が問題ないものかどうか、
是非ご確認いただきたい。
七月の二番煎じ
無二とあるのに二番煎じとは如何なものか。
さりながら、
「河庄」に違和感を覚えたが故に、
ピッチ修正版(半音)を参考に供した次第。
ご批判ご意見等お寄せいただければ。
さりながら、
「河庄」に違和感を覚えたが故に、
ピッチ修正版(半音)を参考に供した次第。
ご批判ご意見等お寄せいただければ。
七月の無二
口三味線:綱=弥七[195901]
河庄:綱=弥七195207東京
大和屋:綱=弥七【義太夫特集219660911NHKR
この演目ならこの人。
もちろん横綱相撲は取れるのであるが、
鮮やかに決まるというのはまた特別。
たとえば、
いくら「情を語る」のが第一と喧伝してみても、
小春が陰気で沈み込むばかりではお話にもならない。
演者があっての演目設定、
しかしこれも今は昔。
河庄:綱=弥七195207東京
大和屋:綱=弥七【義太夫特集219660911NHKR
この演目ならこの人。
もちろん横綱相撲は取れるのであるが、
鮮やかに決まるというのはまた特別。
たとえば、
いくら「情を語る」のが第一と喧伝してみても、
小春が陰気で沈み込むばかりではお話にもならない。
演者があっての演目設定、
しかしこれも今は昔。
六月の感興
沢市内・壷坂寺:若=重造【邦楽演奏会[19661108?]
沢市内・壷坂寺:土佐松津の子=清六徳太郎・清好196002演舞場
面白い、実に面白い。
演者の個性が際立つのも、
「壺坂」が魅力的な曲なればこそ。
傾聴しながらニヤニヤしてしまう、
大団平の節付に脱帽しながら、
堪能するのである。
沢市内・壷坂寺:土佐松津の子=清六徳太郎・清好196002演舞場
面白い、実に面白い。
演者の個性が際立つのも、
「壺坂」が魅力的な曲なればこそ。
傾聴しながらニヤニヤしてしまう、
大団平の節付に脱帽しながら、
堪能するのである。
五月の節付
沢市内:山城綱=弥七19510103NHKR
沢市内・壷坂寺:津=寛治19700201TV
『道八芸談』「壷阪寺の段」
とりわけ、間とノリ
沢市内・壷坂寺:津=寛治19700201TV
『道八芸談』「壷阪寺の段」
とりわけ、間とノリ
4月の「風」
「師匠の節付は、前に申した「三十三所」とか「三信記」のような通し狂言のときは、
さきに役割を定めて夫々場を語る太夫に合うように節付をされたので、
例えば「良弁杉二月堂」は柳適さん、「志賀の里」は朝さん、
「壷阪」は前の島太夫さんのと別にまた大隅さんに合うように付け変えられたのです。
また「油屋」は組さんの為に作られたのです。
こんな風ですから、書卸しの方は大当りに定っていたのです。
この外短い物でも、勤める太夫によって「お前がやるのならこの方がえゝ」と仰っしゃって、
ところどころ直して渡して居られました。
語る太夫の芸のたちに基いて節を付ける、または付け変える。
ということは義太夫の節付の骨張です。」(「清水町師匠の節付」『道八芸談』)
さきに役割を定めて夫々場を語る太夫に合うように節付をされたので、
例えば「良弁杉二月堂」は柳適さん、「志賀の里」は朝さん、
「壷阪」は前の島太夫さんのと別にまた大隅さんに合うように付け変えられたのです。
また「油屋」は組さんの為に作られたのです。
こんな風ですから、書卸しの方は大当りに定っていたのです。
この外短い物でも、勤める太夫によって「お前がやるのならこの方がえゝ」と仰っしゃって、
ところどころ直して渡して居られました。
語る太夫の芸のたちに基いて節を付ける、または付け変える。
ということは義太夫の節付の骨張です。」(「清水町師匠の節付」『道八芸談』)