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[255] 呂勢と越路の「と」  その5
 越路の「と」が神語の伝達を明示するものであり、人間世界への回転軸である事は明瞭である。
越路は「と」の威力を鋭く直感して、それを自覚的に把握し、的確に表現する事によって、魅力的な、それだけで聴衆を陶然とさせるような「と」を現成させたのである。

 以上、呂勢の「と」によって触発されて、越路の「と」を考察してみました。越路の「と」に対する偏愛から発した、初心の者の一考察に過ぎませんが。
千秋 2022/07/02(Sat) 10:36 | 返信 | 削除 |
[254] 呂勢と越路の「と」  その4
 されば越路の「と」は如何に。
 例えば、越路の「源平布引滝」の「実盛物語」に於ける「『‥主従三世の機縁ぞ』と仰せを」の「と」は、主君格の葵御前の詞である事を決然と示しており、いわば神語としての詞である事を「仰せ」と繋げて、越路は「場」に向けて展開しているのである。
 越路の「と」はこの様に自覚的である。

その自覚的な「と」を駆使しているのが「冥途の飛脚」の「封印切」である。印象深い「と」が多数あって、越路の「と」への理解が卓越しているのが判るのだが、
圧巻は「‥『舌を切ツても死にたい』と もだへ伏したる苦しみを。」
の「と」であろう。
 この「と」は梅川の切迫した「生」からの落下を受け止めて、「地」へと展開させる回転軸であって、越路の揺らぎ延ばした「と」の回転は恰も錐の様に「地」に突き刺さって、その場を共有する聴衆の肺腑を抉る事になる。
 また「『梅川に許してくださんせ』と 声をあげて泣きけるが」の長く響く「と」の哀切さは悲劇に向かってゆっくりと回転する軸の軋みであろう。
 梅川は「生」を放下しようとし、忠兵衛の行状を身に引き受けようとして、「詞」を発する。その「詞」は既に、生身の人間の発する言葉ではなくなっている。因みに、この時梅川は二階にいて、「‥死にたい」と言い、「梯子駈下り」て「許してくださんせ」と言うのである。上の世界から下の世界へ。ここで発せられた「詞」は、もはや神語であろう。
千秋 2022/07/02(Sat) 10:31 | 返信 | 削除 |
[253] 呂勢と越路の「と」  その3
 さて以上の折口の言説を踏まえて、「と」について分析してみよう。「‥‥‥‥と、言教へ給ひき。」を構造化すると、「(神)は『‥‥‥‥』と、言う」と表される。この時、「と」の意義が明確になる。即ち「と」は神言「‥‥‥‥」を話者(みこともち、ほかひ人)の「場」に展開させる役割を果たしているのだ。この「場」はあくまで現実に接近するので、「と」は即ち、「神言」を現実に繋ぐ、つまり神の世界から人間世界へと回転させる軸になるのである。そして鋭く回転する「と」は現実に深々と打ち込まれる錐となり、楔ともなるのだ。
 「現実」への回転軸であり、同時に錐とも楔ともなる。これが「と」の意義、役割であろう。
千秋 2022/07/02(Sat) 10:15 | 返信 | 削除 |
[252] 呂勢と越路の「と」  その2
抑も「と」とは何か。文法的に引用の格助詞であるのは、自明の事であるが、果たしてそれで事足れりと為せるのだろうか。越路の「と」を分析するには、違うアプローチが必要であろう。
 
 それ故折口信夫の「古代研究」に於ける「国文学の発生」「神道に現れた民族論理」の内容を援用して、「と」の内実を明らかにしてみたい。折口の論理は錯綜しているので、かなり強引に纏める事になるが。

 折口の言説
古代「みこともち」なる者が存在したが、それはお言葉を伝達する者であった。そのお言葉とは神のお言葉、即ち「神言」であり、神言の伝達者が「みこともち」なのである。この「みこともち」が神言を持って諸所に伝える時、やがて祝言が加わって「ほかひ人」となり、巡遊伶人の趣を呈する事になる。
 そしてその「神言」は神の呪言であって、秘密の伝承であった。「天(アマ)つのりとの太(フト)のりと言(ゴト)」がそれである。
 「‥‥‥‥と、言教へ給ひき。」の「‥‥‥‥」の部分が天つ祝詞、即ち神言であって、それは秘せられているのである。
千秋 2022/07/02(Sat) 10:08 | 返信 | 削除 |
[251] 呂勢と越路の「と」  その1
先つ頃NHK 放映の「義経千本桜」を視聴しましたが、中でも呂勢太夫の「八幡山崎」が素晴らしかつた。この人は美声で且つ発音が明確。それ故に1語1語が粒立ち、玉の転がる様な響きがあります。音楽的にも美しい浄瑠璃の流れ。殊に静の詞が絶妙でした。「‥まんがちな人ではある」「エゝあの人のぢやらぢやらとてんごうなことばつかり」などは、珠玉の転がるその音が、停まるかと思えば流れ落ち、落ちるかと思えば、ゆるゆると揺蕩って、絶妙の「間」を作るので、まさしく「何気も媚く詞」となって、聴き手を翻弄し、陶酔させました。
 抜群の才能が感じられます。またこの人の「と」の扱い方にも感心しました。「『静、心が付かざるか』と」の「と」は低いがきっぱりとした重々しさがあり、「『‥またこの仕儀はどうぞいの』と」の「と」もよく押さえが効いていて、恰も越路太夫の再来かと思える程です。
 それなら余計に喜ばしい。何故なら越路の「と」には越路の卓越したセンスが表れているからです。
千秋 2022/07/02(Sat) 10:02 | 返信 | 削除 |
[250] 七月
酷暑という文字を早くも使うことになろうとは。
しかしこの先はまた別の文字を使うことになるのだろう。
もちろん、
順ではなく引き続き酷を頭に付けて。
すべては気候変動という、
人類の賜物である。
自戒も自壊の後では遅すぎる。
勘定場 2022/07/01(Fri) 07:54 | 返信 | 削除 |
[249] ○○の文楽
大阪(大坂)と入れたいところですが、
書き込みいただいたとおり、
東京=日本が入ることになりましょう。

いつの頃からでしょうか。
私事ですが、
1970年代後半に首都圏の大学生だった時、
帰省してFM大阪で聞いたポップスベストテンの曲が、
数週間遅れでFM東京にてランクインすることが多かったような。

とはいえ、
書泉グランデで店頭在庫切れの書籍が、
数時間待つと届けられ購入できた時や、
秋葉原のビル丸ごとがレコード販売店で、
どんな演奏家でも輸入盤でも即座に手に入ったことに、
首都東京の情報集積とはこれかと、
驚いていたのでしたが。
勘定場 2022/06/07(Tue) 15:16 | 返信 | 削除 |
[248] 操曲浪花芦
日本庶民文化史料集成でも
翻刻の原本は祐田透写本のみとなっていましたが、
開催中の近松半二展に展示されていたし、
本日郵送された古書店目録にも
掲載されていました。

1桁やすければ・・・
ね太郎 2022/06/06(Mon) 19:21 | 返信 | 削除 |
[247] 六月
五月雨を集めて涼し最上川
岸に蛍を繋ぐ船杭

「涼し」なればこその蛍火。
流れて繋がるは浄瑠璃義太夫節の真髄。
「早し」こそ芸術の域と言うが、
唯我独尊なる勲章など麦酒瓶の王冠にも劣る。
勘定場 2022/06/01(Wed) 16:59 | 返信 | 削除 |
[246] 情報資料室
ね太郎様よりの労作、
研究者にとっても有益この上ないものにて、
「音曲の司」の大黒柱そのものであります。

トップページまたは更新記録のリンクよりご覧ください。
勘定場 2022/05/27(Fri) 18:14 | 返信 | 削除 |

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