浄瑠璃歌仙

<碧翠亭>

−いづくからの巻−(01.09.12〜02.05.22)
発句  (秋)  いづくから太棹の音や高き空 〔さるんど〕  (付合参照)
(秋)  梢の桃ぞ実りたりける 〔勘定場〕 「志渡寺」
第三 (秋) 行く秋の琵琶に名を借る音羽山 〔勘〕 「音羽山」
オ四 (雑)  大石さがす辛き街道 〔さ〕 「八段目道行」
オ月 (冬) 月白く母のおもひは髪に霜 〔さ〕 「引窓」
オ端 (雑)  二股竹の藪を透かして 〔勘〕 「紙屋内」
ウ立 (雑) 女夫連れ遠目鏡にも叶ふなり 〔勘〕 「藤川新関所」
ウ二 (雑)  人にはあらで狐忠信 〔さ〕 「千本道行」
ウ三 (秋) わが妻は草間になける秋の暮 〔さ〕 「葛の葉子別れ」
ウ四 (秋)  桔梗が原にあはれ残れる 〔勘〕 「桔梗原」
ウ月 (秋) 帰り路は月を弓手に持ち替へて 〔勘〕 「茶屋場」
ウ六 (夏)  官女の手にも破れ団扇かな 〔さ〕 「渡海屋」
ウ月 (恋) 苧環も恋の重荷よ空まはり 〔さ〕 「妹背山道行」
ウ八 (雑)  とくとくござれ井手の玉水 〔勘〕 「上田村」
ウ九 (雑) 在郷唄母は春日に年古りて 〔勘〕 「春日村」
ウ十 (春)  膾の鉢に梅がひとひら 〔さ〕 「野崎村」
ウ花 (春) 一重八重心のこして花の散る 〔さ〕 「桜丸切腹」
ウ端 (春)  白酒飲んで邯鄲の夢 〔勘〕 「酒屋」
ナオ立 (雑) 茶目いても伝授となれば油断なき 〔勘〕 「沼津」
ナオ二 (雑)  白い草紙に滲むいろはよ 〔さ〕 「寺子屋」
ナオ三 (雑) 色ごのみ歌を坊主に習ふなり 〔さ〕 「恋歌」
ナオ四 (冬)  時雨炬燵のぬるき頃合 〔勘〕 「紙屋内」
ナオ五 (冬) 火廻しも釣瓶縄では燃えもせず 〔勘〕 「六軒町」
ナオ六 (雑)  まどひを照らす高き燈籠 〔さ〕 「合邦」
ナオ七 (夏) 敦盛の影にふさはし夏木立 〔さ〕 「熊谷陣屋」
ナオ八 (夏)  明石の浦に扇ひとひら 〔勘〕 「明石船別れ」
ナオ九 (雑) 三味線の男浪女浪を聞かすなり 〔勘〕 「封印切」
ナオ十 (秋)  秋草揺れて狐一匹 〔さ〕 「蘭菊の乱れ」
ナオ月 (秋) 振り仰ぐは配所の月ぞ有為転変 〔さ〕 「天拝山」
ナオ端 (雑)  大宮人はいかゞ見るらん 〔勘〕 「矢の根」
ナウ立 (雑) 身の上を包む紙子ぞ錦なる 〔勘〕 「吉田屋」
ナウ二 (雑)  子のひもじさに饅頭は毒 〔さ〕 「政岡忠義」
ナウ三 (春) 見はるかす湖水に霞む水手の歌 〔さ〕 「浪花入江」
ナウ四 (春)  虎もおぼろに筍の藪 〔勘〕 「土佐将監閑居」
ナウ花 (春) 長等山今年も花と咲き匂ふ 〔勘〕 「林住家」
挙句 (春)  初音の鼓君を寿く 〔さ〕 「千本道行」

−見わたせばの巻−(01.02.05〜06.11)
発句  (春)  見わたせば花にははやき吉野山 〔里の紅梅〕  「初音旅」
(春)  万歳楽に木の芽咲き出づ 〔勘定場〕 「四季寿」
第三 (春) 折りとれば遥かに白し梅の花  〔さるんど〕 「野崎村」
オ四 (春)  牛を歩ませ春風の吹く  〔勘〕 「天拝山」
オ月 (春) かげきよき名ぞしのばるる京の月 〔竹の末葉〕 「琴責」
オ端 (雑)  山伏一人欄干に倚る 〔波方林里〕 「五条橋」
ウ立 (雑) 塞き敢へぬ心の鬼と身を沈め 〔勘〕 「日高川」
ウ二 (恋)  思ひ堰止む恋の柵 〔竹〕 「帯屋」
ウ三 (春) 突き遣りて流す道具にちる桜 〔紅〕 「山」
ウ四 (雑)  水差つかひ飯濯ぎけり 〔さ〕 「御殿」
ウ五 (雑) ちゅうの字を孝と変へたし廓雀 〔竹〕 「封印切」
ウ六 (雑)  親の仇追ひあすは相良か 〔波〕 「北国屋」
ウ月 (秋) 名月に群れ飛ぶかもめを嬲りけり 〔さ〕 「茶屋場」
ウ八 (秋)  清水に祝ふ菊の盃 〔勘〕 「鬼界が島」
ウ九 (雑) 色見れば心もさらにやはらぎて 〔波〕 「菊畑」
ウ十 (雑)  東へ行かふと御諚めでたき 〔紅〕 「道中双六」
ウ花 (春) 鐘の音も花に暮れ行く川堤 〔勘〕 「揚屋」
ウ端 (雑)  弘誓の船に船遊山して 〔竹〕 「大川」
ナオ立 (雑) 手討とは無体傾城に罪はなし 〔紅〕 「十人切」
ナオ二 (秋)  鹿もたゝずむ時知らす鐘 〔さ〕 「芝六忠義」
ナオ三 (雑) 糸竹の曲にあはれを感じけり 〔竹〕 「陣門」
ナオ四 (恋)  わかれし妻の物語聞く 〔波〕 「宿屋」
ナオ五 (雑) 蚊帳裂いて殺して涼め傀儡師 〔さ〕 「五人伐」
ナオ六 (雑)  まもるは母の誠なりけり 〔勘〕 「三浦別れ」
ナオ七 (雑) 剣にて四百余州をおさむるも 〔波〕 「甘輝館」
ナオ八 (雑)  女の眼には化粧箱なり 〔紅〕 「沓手鳥孤城落月」
ナオ九 (秋) 振り立てて五穀の実り祈るべく 〔勘〕 「式三番」
ナオ十 (秋)  舞ふも忠義の千秋万歳 〔竹〕 「万歳」
ナオ月 (秋) 月のもとかへる我子の髪を梳く 〔紅〕 「引窓」
ナオ端 (雑)  櫛笄を銀の才覚 〔さ〕 「沼津」
ナウ立 (雑) おもはゆく汗をかいたるはれ小袖 〔竹〕 「筆法伝授」
ナウ二 (雑)  着かへて絵かきの名字をなのる 〔波〕 「吃又」
ナウ三 (夏) 青葉燃ゆ波間に果つる笛の声 〔さ〕 「組討」
ナウ四 (雑)  明日は都にかへる恩愛 〔勘〕 「日向島」
ナウ花 (春) 折りとりて箙にさせる花一枝 〔波〕 「神崎揚屋」
挙句 (恋)  物がたりせむ雨のきぬぎぬ 〔紅〕

−竹のすへの巻−(00.10.09〜12.04)
発句  (春)  ただ頼むもとの繁りへ竹のすへ 〔竹の末葉〕 
(雑)  明らけき代を目守る裲襠 〔勘定場〕 「御殿」
第三 (雑) わけのある文の遣ひもいそがれて  〔波方林里〕 「長局」
オ四 (秋)  賑ひ早き秋風のさと 〔勘〕 「茶屋場」
オ月 (秋) 待宵の月に並べん米団子 〔ね太郎〕 「欠け椀」
オ端 (雑)  心も空も晴るる頃合 〔勘〕 「五条橋」
ウ立 (冬) 雪の朝ぬかるむ道もきらめきて 〔波〕 「花水橋引揚」
ウ二 (雑)  胸に當りし折竹の声 〔竹〕 「山科閑居(後)」
ウ三 (夏) 浮雲に小田うち続く夕涼み 〔勘〕 「尼ヶ崎」
ウ四 (雑)  のぞく格子の奥の間の客 〔ね〕 「河庄」
ウ五 (恋) 告げ口を聞きて出だせる苧環ハ 〔波〕 「杉酒屋」
ウ六 (雑)  糸に寄る身のささがにを引く 〔ね〕 「姫戻り」
ウ七 (秋) 葛の葉も裏見る秋に黄昏て 〔勘〕 「子別れ」
ウ八 (秋)  つま恋う鹿のこゑぞ身にしむ 〔竹〕 「芝六忠義」
ウ九 (雑) 身に積もる歎きの数の重なりて 〔ね〕 「宿屋」
ウ十 (雑)  小町小町と謳はれし頃 〔勘〕 「鮓屋」
月花 (雑) 月は花は世にあるうちぞ破れ紙子 〔さるんど〕 「吉田屋」
ウ端 (雑)  いろはにほへと須磨の関守 〔勘〕 「寺入り」
ナオ立 (春) 浅き春親子はいはひ箸とりて 〔波〕 「茶筅酒」
ナオ二 (春)  来ぬ人を待つその嫁菜汁 〔竹〕 「桜丸切腹」
ナオ三 (春) 梅が香も包みかねたる綿帽子 〔勘〕 「野崎村」
ナオ四 (冬)  雪げにひびく鶴の巣籠 〔さ〕 「山科閑居(前)」
ナオ五 (雑) うけながしおさへて見れば許嫁 〔波〕 「毛谷村」
ナオ六 (雑)  煙草きるなり岡崎の里 〔さ〕 「岡崎」
ナオ七 (雑) 遥かなる思ひは空にたなびきて 〔勘〕 「八段目道行」
ナオ八 (雑)  旗指物も修羅のまぼろし 〔さ〕 「熊谷陣屋」
ナオ九 (夏) 梅雨晴れやしめりがちなる松の声 〔竹〕 「寺子屋」
ナオ十 (雑)  今宵出会はん堀川の辻 〔勘〕 「堀川女敵討」
ナオ月 (秋) 灯の消えていよいよ明く冴ゆる月 〔波〕 「堀川猿回し」
ナオ端 (秋)  狐川にも野菊咲くかな 〔さ〕 「引窓」
ナウ立 (雑) 剽軽の駕籠も片手に差し上げて 〔勘〕 「信田森二人奴」
ナウ二 (雑)  馬子唄囃す赤い姫君 〔さ〕 「道中双六」
ナウ三 (恋) 写し絵に今も声ある面影は 〔竹〕 「十種香」
ナウ四 (春)  簾動かし春風の吹く 〔勘〕 「加茂堤」
ナウ花 (春) 妹と背の春を染め分く花の山 〔竹〕 「山」
挙句 (春)  巡りてもなほ惜しむ永日 〔波〕