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【 煙亭記 塵外居放談 】
(2023.01.19)
提供者:ね太郎
太棹 132号 18ページ
塵外居放談
煙亭記
松王か玄蕃か
=やうやく打切りに=
寺小屋の首実験で「詮議に及ばぬ連れうしよ、と睨み付けられ」の人形、イヤ演出が、松王か玄蕃かの問題は、読者諸君には、アヽうるせへな、と感ぜられるであらうほど、号を重ね、筆を替えての意見開陳であり、本誌前号には、本問題の張本人ともいふべき、安藤鶴夫君が、多年に亘る研究を頗る長文に発表表されて煙亭老骨灰微塵、宛として香港攻略に於ける皇軍新鋭機の爆撃の如く、彼の頑冥なる英総督のやうに、多大の犠牲を省みず抵抗を続くる勇気も無く、例年の通り宿痾漸く重く、褥中に苦悩する煙翁、白旗のやうなものを掲げて、此の問題打切りを宣言すべく、茲に悲壮?なる決意を致した次第である。岡田、齋藤坂本等比の問題に関して意見を寄せ、太棹紙面を飾られた諸兄に対して、甚深なる謝意を表すると共に、唯だ何等研究らしき事もせず、常識と伝統?とによつて固守したる愚見は、尚ほ全体的に抛棄する能はず、安藤君が、誰れが何といつても、古靱氏の松王演出を尊敬するといふと同じく、老生は又た、頑然、アノ場合、旧来通り松王でなく、玄蕃のものであり、玄蕃の動きに任ておきたい、といふ信念を変ずる事なしに行きたいとおもふ事を、付加へて御憫察を願ふもの、未練と嗤ふて下さんすナ、である。