編輯室の窓
文楽 3巻8号
本誌の企画について、いろ/\御意見や御注告をいただくのは有難いが、本誌の編輯方針としては、どこまでも初一念に徹して、古典芸能における高い良識と廣い教養とを持つた健全な研究誌で進みたいと思つてゐる。勿論さうした内容を如何に興味深く読者諸賢の前に提供するかは一重に編輯室同人の責任である。少年雑誌の宣伝文でないが「面白くてタメになる」は或る意味で雑誌文化の理念を明示したものといへる。その「タメになる」に問題があり「面白くて」にも自ら限界はあるが、これも本誌の今後の進むべき風向標の一つとしたい。要は広い意味での演劇文化への貢献に尽きる。
本号掲載の「舞台と客席」の筆者田口竹男氏(劇作家)が急逝された。この原稿は逝去直前のころ御執筆願つたものだが、ゆくりなくも同氏の絶筆と思へる遺稿となつた。晩夏、これも急逝された京大頴原退蔵教授とともに謹んで哀悼の意を表する。(T)
吉田兵次師の「淡路人形浄るりばなし」は筆者病気につき本号は休載させて頂きました。(係)