編輯室の窓
文楽 2巻5号
能勢朝次、頴原退蔵、新開良三ら諸博士のあとを受けて、今月の巻頭論文は新協劇団の村山知義氏にお願ひした。
いふまでもなく本誌がその研究対象としてゐるところのものは、過去の文化と伝統とに育成された我が古典芸能の解明にあるわけだが、然もその研究態度はまた常に過去の低回にのみ偏狭せざる今日的な広い視野と良識とによつて一貫さるべきものだと考へる。例月よりは少し局面をかへて本号に村山知義氏の登場をわづらはせたのも、所詮はこの意味からに外ならない。御精読を乞ふ次第である。
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来る六月上旬に御西下遊ばされる天皇陛下には、文楽座への行幸が内定した。この光栄を記念するため七月号は「文楽行幸記念号」とするため、今、編輯室は大童だ。御期待を乞ふ。
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依然たる輸送難のため、日配の手を通じた本誌の配給も全国一般にムラなく、どこの書店にも毎月飾られてゐるといつたわけに行かない状態が続いてゐる。読者からもこれについての問合せやお叱りが発行所へ多数舞込んで来る。で、この際月々愛読していただいてゐる読者は、なるべく月極めの予約購読にして貰へればお互ひに都合がよい。発行所からの直接郵送にすれば、月々間違ひなく正確に然も最も迅速にお届け出来ると思ふ。今後とも現状のやうな配給状態が続けば、店頭では到底自由に入手していただけないことになるやも計られない。予約購読御希望の方は何月号からとの御指定御一筆の上、発行所宛で半ケ年分六十円(概算)を小為替で御送金願ひたい。(E)