竹本 綱枝
綱巴津の門中尤も将来に望みあるもの、これを竹本綱枝となす、嬢は当年とって十二歳八才にして初めて綱巴津の門に入り、去る廿九年九月初めて師に伴なはれ越子一座に加はり師の絃(いと)に頼りて寄席に顕はれし以来、何時も喝采を博せさるなし、自体声に豊ならざるも其語り振りの大人びて節廻し巧者なるは乙女中稀に見る所なり、其眼を閉ぢ扇子を握りて見台に延上る風姿に言ふべからさる愛嬌を存するあり、忠臣蔵三段目新口村、岸姫、鳴門、小牧山、寺子屋等は尤もよく熟せるもの随つて又聴くべき客受けものなりとぞ
【義太夫雑誌38:20-21評判】