豊澤 力之助

   
  
 
斯芸園裡の二葉草中、将来花方として迎へらるゝ萌しあるものも少からあるが中にも目下竹本朝太夫一座に加りて峯太夫を弾き居る豊澤力之助は前途頗る有望なりとす丈は実に故隅栄太夫(大隅太夫の弟子)の子にして大阪に生長(ひとゝな)り、幼時(いとけなき)より斯道に志し去る廿五年中豊澤丑之助の門に入りて益々斯芸を修業し、在阪の頃は文楽座に出勤して小富太夫を弾き居たり、昨年三月上京して朝太夫一座に加はり竹本峯太夫を弾きて同月上より芝琴平亭に出席せしを初めとして今尚同太夫を弾きつゝあり、目下の若手太夫中段数に富める峯太夫を弾き居る事とて其の伎芸のメキ/\と進み行くは丈の為めに幸福なる事といふべし、其寄席に於ける演芸の、峯太夫と倶に熱心なるは末頼母しき二葉草とや言はん、尚この上とも励みて天晴れ、誉れの花を咲せよかし
【義太夫雑誌 45:18評判】