竹本 蛟龍軒
丈は素(も)と京都の出身にして幼より斯道に志し、五光と称し、素人連を組織したる事はり、今の竹本相生太夫は其頃五竹と称して丈の門に入り同連に加はり居れり、丈は後ち出京して竹本綾瀬太夫の弟子分となり綾永太夫と名乗れり、一昨三十一年蛟龍軒と改名し同時に小石川伝通院境内に寿碑を建設せり、丈が芸外の経暦に就ては記すべきもの甚だ多かれども茲には要なければ省きぬ、嘗て巌谷一六氏が丈に贈りたる詩ありその詩に曰く
蛟龍老益霊。潜在蒼溟水。一嘯可驚人。風雲座中起
是れ其蛟龍の期の号の固(よつ)て来る所以なるべし
【義太夫雑誌54:16面影抄】