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【 感謝と共に 】
感謝と共に
南江二郎
marionnette 1巻p126−127 1930.10.20
白玉の歯にしみとほる秋の酒……それにもまして味はひぷかい秋の来る時、私は京都に住む喜びを、どんなに新にするか知れない。今年の秋は殊に身にしみる……今もまた、この喜びを新に深めながら、この一文を綴つてゐる。全くこの一年を通じて先輩畏友から受けた手厚い指導と厚情は筆紙に尽し難い。心からなる御礼を改めて申上げる。先づ、はげまして下さる意味から、ともかく会員として寵錫の申込をして下すつた方に坪内逍遙、鳥居龍蔵、野口米次郎、新村出諸先生があり、賛助申込をして下すつた方に、河竹繁俊、坪内士行、高田保、榊原紫峰、明石染人、竹内勝太郎、市川猿之助、藤間静枝、花柳珠実、阪東簑助、長谷川伸、豊竹古靭、宮尾しげを、の諸氏がある。次にその業績が比較的に公になつてゐない会員諸足の事を簡単ながら、感謝の意味でこゝに紹介させていただく。(住所問合せに応ず)
先づ諸君の既に御存知であらう方に、本号の執筆者高橋広江、竹中久七両氏があり、オニールの戯曲翻訳・演劇研究家の本田松治、「育児上の縁喜に関する玩具図譜」等の著者なる笠原小児保健研究所の尾崎清次、郷土仮面、文楽人形の蒐集家藤堂献三、婦人問題研究家藤田徳松、同大教授黒田英三郎、能楽研究家の観世宗家令弟片山博通、舞踊の実演的修業の十年以上に及ぶ上野俊雌、文楽系の人形蒐集家で、今春、少女文楽座を創設した桐竹門造、の諸氏がある。
新進気鋭の誌友として、渡邊修三、 天野隆一、俵青茅、左近司、相沢等、半井康次郎、安藤真澄、児玉笛麿、長野晶水、藤井俊一、小西武、高祖保、山村順、岩間純、永瀬清子、の諸氏がある。他に佐藤清氏がある。(先輩、詩友のうちで特に人形芝居に関心を寄せられた人々に佐藤春夫、萩原朔太郎、堀口大学、日夏耽之介、高村光太郎の諸氏があり、雑誌其他に拠り本誌に厚情を寄せられた人々に、吉井勇、白鳥省吾、福田正夫、川路柳虹、百田宗治,井上康文、佐藤一英、前田鉄之助、佐藤惣之助、柴山晴美等の諸氏がある。)京都帝大系の新進としては谷野芳輝、清水政男、中本元行、和田平四郎、の諸氏があり、日活撮影監督部の山下元広氏、やぼんな書房に拠る詩人西谷操氏、「大毎美術」にゐる永野芳一氏、「佐波郷土研究」の青柳秀雄氏、丹波文化協会の山田弘、安藤安孝両氏、物理学者で音楽家の福光勝氏等がある。
勿論以上は比較的詳しくその消息を知つてゐる人々で、マリオネツト会員数の三分の一にも満たない。この機に未知の会員諸兄が消息を時々下さる事を願つておく。今後どん/\それぞれの研究を拙誌にもいただきたい為である。