詞藻

東京浄瑠璃雑誌 2巻2号

 

○新評戯曲題詞十首、為依田学海翁、

          佐藤 六石 (掲載者注:「新評戯曲(1894.1.20発行)(国会図書館近代デジタルライブラリー)掲載の詞」)

 

回文錦字托相思。盲女琵琶情景恋。弾涙何人繁似露。碧雲扇上蕣花詞。生写寓朝顔話
   学海曰、濃厚密麗、此是才子筆、

 

貞心侠気雨相憐。生別従頭是底縁。説到真情多痛涙。此擒処手軟干綿。関取千両幟
   学海曰、向四柱中間、翻一筋斗、喝釆満場、却従此軟綿手裏弄将来、絶奇絶奇,

 

檀浦寒潮咽不平。抉吾両眼訴吾情。匹如伍子当年恨。破楚門頭怒浪生。 出世景清
   学海曰、比喩的確、詩亦似王新城詠古諸作、

 

欲将逆櫓倒狂瀾。転覚人間行路難。福島一株松堰葢。満船初旭護孤寒。平仮名盛衰記
   学海曰、旭字松字摘来做個材料、又是首篇同一用法、

 

新評一出世堪醒。知与淫哇有径庭。思到無邪本同揆。不妨呼做小葩経。
   学海曰、褒奨過当、唯排斥淫哇一事、不敢推譲也、

 

○ 義太夫節読込歌仙一折

 

布四    人やある紅葉の奥のびは一手 喜双

近八    峰吹く風の律もひやゝか   一力

恋飛脚   ことし酒封切る金を月かけに 双

先代萩   雀や犬にくゞらせぬ垣    力

新口村   雪が降りさうなと明る障子越 双

信仰記   捧しはりなる鮭かつき行   力

城木屋   出れは入る出家侍諸商人   双

三日ノ九  西は山崎淀の川船      力

朝かお小家 おもふ事叶はぬが世の習ひ也 双

千本三   娘が漬けた鮓を茶にする   力

夕顔棚   風薫る軒を目あての菖蒲うり 双

合邦ヶ辻  何を踏んだか足のうら/\  力

御所三   本陣のざはつく二十六夜待  双

小揚    鴫を突くのか稲らむのかげ  力

天神堤   やゝ寒う煎じあげたる薬鍋  双

質店    晴れた/\といふも高声   力

松王屋敷  八重ひとへ九重の花里の花  双

菅四    子ばかり撰てのける種芋   力

 

(2006.08.19掲載)
提供者:ね太郎